工場デジタル化Ver06. 「AI は新規品に弱い。では製造業はどうするのか?」
- shigenoritanaka3
- 3月30日
- 読了時間: 4分
2026/03/30
今回もお読みいただきありがとうございます。
私はこれまで、砂型鋳造工場のデジタル化・AI 導入を 6 年間推進してきました。 その中で痛感したのは、AI は万能ではないということです。
特に、製造業にとって避けて通れない “新規品” に対して、AI は極めて弱い。 今日はその理由と、現場が取るべき現実的なアプローチについてお話しします。
1. AI は“過去データがないと動けない”という宿命を持つ
AI(特に機械学習モデル)は、
過去の生産実績
過去の不良履歴
過去の検査データ
過去の工程条件
これらを学習してパターンを見つける仕組みです。
つまり:
過去データがなければ、AI は何も判断できない。
これは AI の限界ではなく、仕組み上の宿命です。
**データの正確性がいかに重要か は、過去ブログご参照ください:
2. しかし製造業は“常に新製品を作らなければならない”
製造業の現実は AI と真逆です。
新規金型
新規材質
新規工程
新規顧客仕様
毎月のように新しい製品を立ち上げる必要があります。
当然、そこには
生産実績がない
不良履歴がない
検査データがない
最適条件の履歴もない
つまり、AI が学習するための“材料”が何もありません。
**工場デジタル化の限界については、こちらで整理しています:
3. 新規品に対するアプローチは大きく 2つしかない
これは世界中の製造業が採用している“王道”であり、 私が現場で実際にやってきたことでもあります。
アプローチ① 類似品を参考に内部規格(Internal Specs)を設定する
新規品でも、ゼロから始めるわけではありません。
材質
肉厚
金型構造
冷却条件
注湯条件
過去の不良傾向
これらをもとに、 「この新製品なら、この範囲で作るべきだ」 という 内部規格(Parameter Window) を設定します。これは AI の世界でいう 転移学習(Transfer Learning) と同じ発想です。
アプローチ② 方案専門家に「パターン別の汎用処方箋」を作ってもらう
鋳造・金型・成形の専門家は、 経験と理論から最適条件を導き出すことができます。
• 冷却ドラム出口温度
• 砂混錬サイクル
• AFS
• 活性/非活性粘土
• 水分
• 通気度
• 注湯温度・速度
• 造型圧縮強度
• コンパクタビリティ
これらは、まさに “処方箋(Prescription)” です。
4. 結論:AI は“人間が作ったモデル”の上でしか動けない
AI はどれだけ高度でも、 数学的最適化の塊であり、人間が学習モデルを提供してあげなければ動かない。
だからこそ、新規品では:
① 類似品モデル(データ)
② 専門家の処方箋(知識)
この 二本柱 がなければ、AI はまったく機能しません。
5. この 6 年間、顧客と私が向き合ってきたのは
- AI を動かすための“学習モデルをどう作るか”という問いだった
私が 6 年間取り組んできたのは、 AI の導入そのものではありません。
データをつなぎ
バッチを統合し
検査結果を紐づけ
専門家の処方箋を形式知化し
初期ロットを学習データ化し
AI が誤学習しないように現場を整え
継続的に改善し続ける
つまりAI が学習できる“環境”を、顧客とともに設計し続ける仕事でした。
製造業の現実に照らすと、こうした考え方も AI 運用を成功裏に進めるうえで、一つの手がかりになり得るのではないかと感じています。
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製造デジタル・AI・IoT の導入において、 「誰も前に出ない領域」で PMO を引き受け、 現場と本社をつなぎながら推進していく案件について、 もしお困りのことがあれば静かにお力になれると思います。
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