日本-西欧文化違いVer17. 「日本企業の稟議文化はなぜ生産性を下げるのか」

2026/09/28
お読みいただきありがとうございます。
今回は、日本人にとっては当たり前でありながら、海外から見ると非常に異質に映る “稟議(りんぎ)文化” について書きたいと思います。
■はじめに
外資系企業で働き始めたとき、最初に驚いたのは「稟議というものが存在しない」という事実でした。
日本側から欧州本社へ直接報告する体制で、当座貸越枠の減額や棚卸差異の処理といった、いわゆる“重要案件”でも、当然のように稟議書を作成し、根回しし、決裁ルートを通すものだと思っていました。
そこで日本流に「まずは根回しメールを」と思い、担当役員へ状況を説明したところ—— 返ってきたのは、たった一言。
“Approved.”
この経験が、日本企業の稟議文化を根本から見直すべきだと感じた出発点でした。
■日本企業には職務分掌規程があるのに、なぜ稟議が必要なのか
日本でも中堅以上の企業であれば、誰が何を決めてよいかは規程で明確に定義されています。
にもかかわらず、実務では簡単な案件でも稟議書が要求されます。
これは制度の問題ではなく、文化の問題です。
■欧米企業の意思決定はシンプル
欧米企業では、通常業務の意思決定は非常にシンプルです。
担当者がメールで起案
権限者がメールで “Approved”
それで完了
所定フォーマットが必要なのは、大型案件受注、設備投資、人員補充など会社の方向性に影響する案件だけです。
■日本企業では通常業務でも稟議+資料
日本企業では、通常業務でも例外業務でも稟議書が必要になります。

稟議書作成
補足資料の準備
関係部署の確認
決裁ルートの通過
最終承認
この“儀式”が通常業務として定着しているのが特徴です。
■そもそも稟議とは
日本企業の稟議とは、担当者が起案した申請書類にライン上の役職者が一人ずつ印鑑を押していく日本独自の承認決済システムです。

つまり、
課長
部長
本部長
役員
といった階層を 順番に通過すること自体が制度の目的になっているのです。このため日本の中堅以上の企業ではこうした形式主義にとらわれ、一般的に意思決定が遅くなりがちです。
しかし本来の目的は、
関係者の合意形成
必要な情報の共有
リスクの確認
最終承認
ことであり、階層を一段ずつ通過することではありません。
■それでも日本企業が稟議にこだわる理由
日本企業が稟議を要求する理由のひとつとして、 「担当者がいきなり役員に申請し、中間管理職が知らないまま意思決定が進むことを避けたい」 というリスク回避思考があるためと推測しています。
また承認を求められた稟議に対して細かい難癖をつけることを上長が “役職者の権威として感じている、”
そしてそれを“重要な仕事だと錯覚している” ことも稟議がなくならない理由の一つとみています。
しかし、こうした“ナンセンス”を避ける方法は本来もっとシンプルです。
“役員に承認申請メールを書く際に、中間管理職をCCに入れればよいだけ”です。
そして、CCに入れるということは、 その前に中間管理職への根回し・合意形成が完了している証明にもなります。つまり、稟議という“儀式”を使わなくても、 情報の抜け漏れはメールだけで防げるわけです。
■稟議が評価軸をゆがめている本質
本来申請者が評価されるべきは、次のような 実務能力そのものです。
決裁ルートを通すための社内折衝能力
反対者が出ないように事前に合意形成する能力
決裁された内容を申請どおりに成果へつなげる実行能力
ところが日本企業では、稟議の文章がうまい、資料が丁寧といった“形式的な巧拙”が評価される傾向にあります。ここにも稟議文化の歪みがあると思います。
■意思決定の遅さが機会損失につながる
稟議文化の弊害は明確です。
稟議書作成に時間がかかる
決裁ルートが長い
補足資料の要求が増える
展示会・商談で即答できず、ビジネスチャンスを逃す
欧米企業とのスピード差が、そのまま競争力の差になります。
■結論:稟議という“儀式”をやめ、欧米型へ移行すべき
日本企業が生産性を上げるためには、 稟議という“通常業務の儀式”を廃止し、 欧米型の意思決定プロセスへ移行する必要があります。
会社の方向性に影響する案件だけ、所定フォーマットで申請・決裁する
通常業務は、担当者が起案 → 権限者がメールで承認(Approved)→ 完了
評価軸を、形式ではなく実務能力(折衝・合意形成・成果創出)へ戻す
これが、日本企業の競争力向上につながると考えます。
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