会計_Ver04. _「製造業のプロジェクト会計では、なぜ “引当/見込費用計上” が不可欠なのか —未発注費用 / 発注済費用 / 請求費用 の3区分で数字のズレを防ぐ」
- Shigenori Tanaka

- 3月12日
- 読了時間: 4分
2026/03/12
どーもです。
今回は、プロジェクトマネジメント(スコープ・スケジュール・予算・リソース)における 予算管理のためのプロジェクト会計 について書きます。
■ はじめに
製造業のプロジェクトでは、実際にはコストが発生しているのに、 請求書がまだ届いていない というケースが日常的に発生します。
外注加工の追加費用、材料の追加投入、修理・補修、プロジェクトの追加工数など、 “発生しているのに数字に反映されていないコスト” は想像以上に多いです。
これらを 引当/見込(Provision / Accrual)として計上せずに放置すると、
月次利益は乱高下し
プロジェクト損益は嘘になり
経営判断そのものが誤った方向に進みます
本稿では、Provision / Accrual を 未発注費用 / 発注済費用 / 請求費用 の3区分で整理し、 数字のズレを防ぐための実務的な設計方法 を解説します。
① Provision と Accrual の本質的な違い
まず前提として、Provision と Accrual は性質がまったく異なります。
Provision(引当金)=発生する“かもしれない”コスト(不確実性あり)= リスクベースのコスト
発生可能性は高い
ただし金額・タイミングが確定していない
Warranty(保証費用)が典型例
Accrual(見込計上)=発生が確実なコスト(コミット済)
経済的実態としてはすでに発生
請求書が来ていないだけ
PO 発行済、作業完了済など
② コストは3つに分類して管理すべき
プロジェクト会計では、すべてのコストを 未発注費用 / 発注済費用 / 請求費用 の3つに分類することで、数字のズレを防げます。
A. 未発注費用
= 未発注だが発生が見込まれるコスト
ここが最も難しい領域です。 さらに 2つに分解 できます。
A-1 Warranty Cost(製品/据付保証コスト=1年以内に発生するリスクコスト)
不具合対応
手直し
保証期間内の潜在コスト
→ Provision(引当金) の対象。
A-2 検収直後に発生が確実視される追加コスト
追加工数
追加材料
顧客要求による追加作業
工場側の手直しが確定しているケース
→ Provision だが、実務的には Accrual(見込費用)に近い扱い。
ここを正しく区分できるかどうかが、プロジェクト会計の精度を決めます。
B. 発注済費用
= 発注済だが請求書がまだ来ていないコスト
これは 100% 発生が確定しているコスト。
外注加工の PO 発行済
材料の PO 発行済
サービスの PO 発行済
→ Accrual(未払費用)として計上すべき。
C. 請求費用
= 請求書が到着し、計上済のコスト
通常の会計処理で問題なし。
③ なぜこの3区分が重要なのか
この区分をしないと:
A を放置 → プロジェクト利益が過大に見える
B を放置 → 月次利益が乱高下する
C だけで管理 → 現場と経理の数字が一致しない
つまり、 Provision / Accrual の本質は「発生ベースでプロジェクト損益を正しくする」こと。
そのためには、経理は PM・製造・サービス・営業・品質保証からの情報連携 が不可欠です。
④ 欧米の PM 会計との整合性
上記3区分は、欧米の PM 会計と完全に一致します。
上記分類 | 欧米 PM 会計の概念 |
A-1 Warranty Cost | Risk Provision |
A-2 確実視される追加コスト | Forecasted Cost |
B 発注済費用(PO-placed) | Committed Cost |
C 請求費用(Invoiced) | Actual Cost |
これは 国際的にも通用するプロジェクト会計のフレーム です。
⑤ この設計を導入すると何が変わるか
プロジェクト利益が安定する
月次利益の乱高下がなくなる
経営判断の精度が上がる
現場と経理の数字が一致する
One Truth が実現する
PMI での会計基準のズレが解消される
まとめ
Provision / Accrual は「経理の作業」ではなく、 プロジェクトの意思決定を支える“数字の基盤” です。
未発注費用 / 発注済費用 / 請求費用 の3区分で整理することで、 プロジェクト損益のズレを防ぎ、正しい経営判断が可能になります。
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