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経営・リーダーシップVer07. 「鋳造デジタルソリューションを“製品版として”世界初受注した日」 ―専門外でも逃げずに前に出た PMO の記録 ―

  • shigenoritanaka3
  • 5 日前
  • 読了時間: 6分

  2026/04/01

 

今回もお読みいただきありがとうございます。

今回は砂型造型工場(鋳造工場)向けデジタルソリューションPMO(Project Management Office)案件を外資系企業で製品として世界初受注したお話です。

 

ある鋳造企業から、長年こう言われていました。 「PLC があるのだからデータは存在する。 でも工場の実態がまったく見えない。 リアルタイムで可視化できる仕組みがほしい。」

 

欧州本社はそのシステムを開発していましたが、市場投入は遅れ、 顧客の期待も薄れつつありました。

そんな中、欧州本社のデジタル営業責任者が突然来日し、 可視化に加え、AI による不良低減の処方箋まで出せる “製品版としてのデジタルソリューション” がようやく完成したと知らされました。

 

プロトタイプは南アフリカや欧州で既に販売されていましたが、 AI まで含めた正式な製品版としての販売は、この案件が世界初 でした。

 

2019 年、この鋳造企業に提案したところ、 可視化には強い関心を示したものの、AI の必要性は感じないと言われました。

 

その瞬間、私は前に出る覚悟を決めました。

「今回のデジタル投資を、どう回収するのか。 その原資は不良低減に置くべきではないか。」

 

投資採算モデルを作成し、顧客側は助成金を活用して投資を実行。 なんとか契約にこぎつけました。

 

※ 工場デジタル化の効用と限界については、こちらをご参照ください >>工場デジタル化_Ver01. _「砂型鋳造工場デジタル化の効用と限界-抱き合わせで何を採用すべきか」

 

社内では強い反対があった

日本法人では、受注に対して誰もが反対でした。

「田中さん、こんなものを受けたら責任はとれないよ。 誰がやるんだ。」

「技術的に本当に完成しているのか疑わしい。首を突っ込んだら泥沼にはまるよ。」

 

私はこう答えました。

「仮にデータアップロードがうまくいかなくても客先の生産に影響はない。 私がやるので、皆さんに迷惑はかけない。」

この瞬間、自分が前に出るしかないと腹を括りました。

 

専門外の領域に、一人で踏み込んだ

当時私は、日本法人の代表でありコントローラーも兼務していました。 最重要の二つの職務を抱えながら、 鋳造のイロハも、デジタル IoT のイロハも知らないまま受注しました。

 

それでも PMO として現場に入り込み、工程を理解し、 工場全体の LAN・CC-Link ネットワークについては 客先担当者が詳細に調査し図面化してくれました。

その協力を得ながら、私はアップロードシステムの要件定義や 数千項目のデータ整理(データ名・スケーリングファクター・単位・PLC アドレス・データソース)と英訳を行い、 海外本社との連携を通じて、異なるメーカーの機器・PC から すべてのデータを可視化しました。

 

AI モデル構築からユーザー教育まで、すべて前面で推進した

さらに、海外本社が提携する南アフリカの AI 企業と密に連携し、

  • AI が正しく動くためのデータ読み込み方法の調整

  • 注湯を起点としたバッチ単位の生産データ統合

  • 検査結果との紐付けによる AI 学習モデルの作成

  • 製品単位の AI 処方箋の精査

  • 顧客向けデジタルサイトへのリリース

  • ダッシュボード構築

  • マネジャー・オペレーターへのレクチャー

 

まで行いました。

 

もちろん、ネットワークやデータロギングに精通した顧客側担当者の支えがあったからこそ実現できた部分も多くありました。

 

そして迎えた結論:可視化の完成と AI の実証

受注から 1年以上かかりましたが、 海外本社および客先担当者の協力のもと、 工場全体の可視化は無事完成しました。

 

2021 年、コロナ禍の最中にもかかわらず、 海外本社のデジタルエンジニア、鋳造アプリケーションエンジニア、 南アフリカから AI エンジニアが来日し、 AI の試運転と結果評価を実施。

その結果、 約40%の不良率低減につながることが証明されました。

 

しかし、本当の勝負はここからだった

AI の実証で終わりではありません。 最も重要なのは、 日常オペレーションの中で AI を活かし、 定常的に不良率を下げ続けること。

私は検査結果を日常的にウェブで監視し続けました。

  • 検査進捗率が 100% 以上のデータが多い (200%超等)→ 製造年月日の誤入力を検知

  • 同じバッチなのに検査者によって不良率が大きく異なる  → 検査者レベルのばらつきを発見

 

これは、 検査データの歪みが AI モデルの精度を大きく損なう ということを意味します。

 

AI は結局、数理計算です。 前提となる学習モデルに不備があれば、 どれだけ高度なアルゴリズムでも精度は出ません。

 

だからこそ私は、AI が誤学習することを恐れ、 6 年間にわたり日常的に改善に取り組み続けました。

そのため、入力ミスを防ぐ仕組みの導入、 検査者レベルの均一化を目指した仕組みづくり、 ユーザートレーニングの提供まで踏み込み、 継続的に現場と向き合ってきました。

 

さらに、新規品についてはAI の運用は不可能です。 そのため、マネジャー・オペレーターと現実的な改善方法を再三議論し、 運用改善を継続してきました。


そこまでやったからこそ信頼が生まれ、 本業である同社向け設備更新やアフターマーケットビジネスにも 良い影響が出たと感じています。また結果として、顧客は昨年度最高益を更新されました。

 

これはデジタル案件ではなく、リーダーシップの案件だった

振り返ると、 これは技術の話ではありませんでした。

誰も前に出ない状況で、 不確実性に踏み込み、 PMO を引き受け、 現場と本社をつなぎながら前に進めた案件でした。また設備そのものがコモディティ化する中、デジタルサービス提供により旧来の設備販売+アフターマーケットビジネス(部品・サービス販売)に付加価値を提供できたことは大きな意味がありました。

 

詳細は後日ブログにて公開します。

 

 

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このような「誰も前に出ない領域」で PMO を引き受け、 現場と本社をつなぎながらデジタル・AI を実装していく案件について、 もしお困りのことがあれば、静かにお力になれると思います。

 

 

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