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経営・リーダーシップVer12. 「PE 傘下企業のエグゼクティブに求められる本当の役割」 — ビジネスモデルと現場を守るために、PE に意見する責任 —

  • shigenoritanaka3
  • 5月6日
  • 読了時間: 4分

                            2026/05/06


今回もお読みいただきありがとうございます。


本日はPE傘下企業のCEO/CFOをはじめとするエグゼクティブに求められる役割についてお話しさせていただきます。

 

■ はじめに

PE(プライベートエクイティ)とは、未上場企業に投資し、一定期間で企業価値を高めて売却する投資ファンドのことです。

 

PE ファンド傘下の企業では、短期間で EBITA を改善することが求められます。 これはファンドの仕組みとして当然の流れです。しかし、短期の数字だけを追いかけると、 本来伸ばすべき部分が削られ、 長期の成長が損なわれることがあります。

 

本稿では、製造業の実務経験から、 PE 傘下企業のエグゼクティブに求められる「本当の役割」 を整理します。

 

■ 1. PE の時間軸は 5 年前後である


PE ファンドは、 おおむね 5 年前後で企業価値を高め、次の買い手に売却する というモデルで動いています。そのため、短期間で EBITA を改善することが強く求められます。 これは PE の投資モデルが持つ時間軸によるものです。

 

■ 2. メーカーとしての製造業には “高価格・高利益モデル” と “薄利本体+アフター黒字モデル” がある

 

 事業A:高価格・高利益モデル

  • 技術優位性やブランド力があり、高価格・高利益を維持できる事業

  • 本体もアフターも高利益

  • 投資を続けることでさらに強くなる

 

事業B:薄利本体+アフター黒字モデル

  • 本体製品とアフターを P&L 上で区分すると、本体側は EBITA 赤字、アフター側は EBITA 黒字となり、事業全体では EBITA 黒字になる

  • 競合が多いレッドオーシャン市場で価格競争が激しく、本体側は薄利になりやすい

  • 導入台数が増えるほどアフター収益が安定し、事業として成立する

 

■ 3. この二つが同じグループに併存すると誤解が生まれる


PE は、事業Aの改善手法を事業Bにも適用できると誤解することがあります。

しかし事業Bは、 本体単体の利益ではなく、 導入台数 × アフター収益 で成立するモデルです。

 

■ 4. 本体赤字だけを見て改善を迫ると、ビジネスが崩れる


以下は 事業Bについての例 です。

  • 機械事業:EBITA -20

  • アフター:+50

  • 合計:+30

 

PE はこれを見て単純にこう考えます。

「機械の -20 を 0 にできれば、全体で +50 になるはずだ」

 

しかし実際には、次のように悪化する可能性があります:

  • 値上げで競合にシェアを奪われ、機械事業は -20 → -30

  • 導入台数が減り、アフターは +50 → +40

  • 結果として全体 EBITA は +30 → +10 に悪化


つまり、

短期の数字を良くしようとして、事業Bのビジネスそのものを壊してしまう可能性があるということです。

 

■ 5. PE の担当者にもタイプがある


  • 現場理解の深い担当

  • 数字だけで判断する財務寄りの担当

 

後者の場合、 本体赤字だけを見て上記の例に代表される誤った改善要求を出すことがあります。

 

■ 6. 担当者が誰であっても、エグゼクティブの役割は変わらない


PE の担当者がどのタイプであっても、 現場の実情と事業の特性を踏まえて判断を調整できるエグゼクティブであることが求められます。

 

本来求められるのは:


  • 短期と長期のバランスを取り、短所の是正に偏らず長所を伸ばす判断を行うこと

  • 事業Aと事業Bの違いを整理し、それぞれが取るべき戦略を PE に説明し、理解を得ること

  • PE が不適切な改善要求をしてきた場合、現場の実情を踏まえて反論し、“実行可能な代替案”として提示すること

 

PE の指示をそのまま下に流すだけでは、 事業の持続性は守れません。

 

■ 7. 高い報酬には “短期間で交代させられるリスク” がつきまとう


PE 傘下企業のエグゼクティブは、 高い報酬と引き換えに “短期間で交代させられるリスク” を常に負っています。

 

そのため、 安易に「Yes, Sir」と言ってしまう誘惑は強い。

しかしその判断が影響するのは:

  • 現場のビジネス

  • 顧客との関係

  • 導入台数の伸び

  • アフター収益

  • 社員の生活

 

エグゼクティブが“自分の立場を守るための Yes” を選ぶと、 その下にいる全員が代償を払うことになります。

 

■ 8. 結論:エグゼクティブは “防波堤” であるべき


- エグゼクティブの仕事は、PE の YESマンになることではありません。

 

ビジネスと社員を守る“防波堤”として、 必要な時にはリスクを理解したうえで、 言うべきことを正面から伝える責任 が求められます。

 

短期の数字合わせではなく、 ビジネスモデルと現場を守る判断を導くこと。 それこそが、PE 傘下企業のエグゼクティブに求められる役割だと思います。

 

 

■ お問い合わせ

PE 傘下企業の経営実務、事業改善、エグゼクティブ支援に関するご相談を承っています。 現場の実情に基づいた、実行可能な改善提案が必要な場合はお気軽にお問い合わせください:

 

 

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