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会計Ver05. 「財務会計だけでは正しい意思決定はできない — Gross Margin に固定費が混ざる構造と、管理会計ビューの重要性」

  • 執筆者の写真: Shigenori Tanaka
    Shigenori Tanaka
  • 3月16日
  • 読了時間: 6分

                                2026/03/16

どーもです。

 

多くの企業で、経営リーダーは Gross Margin(粗利)と SG&A(販管費) を中心に議論します。 その結果、次のような矛盾した光景がよく見られます。

  • SG&A だけを執拗に下げろと言う

  • Gross Margin にはほとんど触れない

  • COS(Cost of Sales = 売上原価)=100%変動費だと思っている

  • COS の中に固定費が入っていることを理解していない

 

この状態では、経営実態を正しく把握することはできません。 そして、意思決定の質も上がりません。

 

1. COS の中には固定費が大量に混ざっている

Gross Margin はSalesからCOSを引いた結果ですが、COSには次の費用が混ざっています。

  • 材料費(変動費)

  • 外注費(変動費)

  • 労務費(固定費)

  • 減価償却(固定費)

  • 電力・ガス・水道(固定費)

  • 間接材料費・保全費(固定費)

 

なぜ固定費が COS に入るのか?

 

■ 理由:製造原価と販管費は“性質”で分けられないから

製造業の原価計算では、 固定費を製造原価と販管費に綺麗に分けることはできません。

労務費、減価償却、光熱費などは、

  • 製造にも関係する

  • 販売や管理にも関係する

という“混合性”を持つため、 性質だけで分類することが不可能 です。

そのため企業は、事前に決めた以下のような基準で配賦します。

  • 人数割り

  • 面積割り

  • 工数割り

  • 稼働時間割り

 

つまり:

製造原価と販管費は、 コスト性質で分けられているのではなく、 配賦ルールで“按分されているだけ”。

その結果、 本来は固定費である費用の一部が COS に入り、 Gross Margin は「変動費100%+固定費の一部」が引かれた“ごちゃまぜ利益” になります。

この構造を理解しないまま GM を議論しても、正しい判断にはつながりません。

 

2. 変動費と固定費の“実態ベースの説明”

経営者が直感的に理解できるよう、実態ベースで整理するとこうなります。

 

■ 変動費(Direct Costs)

=受注量に比例して増減するコスト 例:材料費、外注加工費、製品ごとの輸送費

 

■ 固定費(Fixed Costs)

=受注ゼロでも必ず発生する会社全体の共通コスト 例:労務費、減価償却、電力・ガス・水道、間接材料費、保全費

 

3. 財務会計のP&Lと管理会計のP&Lの違い

(例)

財務会計

管理会計

売上高 100

売上高 100

売上原価 (70)

変動費 (40)

Gross Margin 30

限界利益 60

SG&A (15)

固定費 (45)

EBITA 15

EBITA 15

 

EBITA は同じですが、 COS に含まれていた固定費を管理会計では固定費に集約している 点が違いです。

 

4. 販管費に表れる経費は“氷山の一角”でしかない

しかるに多くの企業で、HQ は次のような指示を出します。

  • 「販管費の通信費を下げろ」

  • 「販管費の出張費を削れ」

  • 「販管費の消耗品費を抑えろ」

 

しかし、ここには大きな誤解があります。

 

■ 販管費に表れている経費は、会社全体で発生しているコストの“氷山の一角”でしかない。

たとえば通信費を例にすると、販管費に見えている通信費は、会社全体の通信費のごく一部であり、これを基準に意思決定することは構造的に誤りです。

 

同じ構造はすべての費目に当てはまります。

  • 販管費の労務費は、会社全体の労務費の一部

  • 販管費の消耗品費は、会社全体の消耗品費の一部

  • 販管費の光熱費は、会社全体の光熱費の一部

 

つまり:

販管費に見えている数字は“部分”であって“全体”ではない。 全体を見ない限り、正しい意思決定はできない。

 

5. 正しい意思決定には「トータル固定費の見える化」が不可欠

経営者が見るべきは、 販管費ではなく“トータルの固定費” です。

  • トータル通信費

  • トータル労務費

  • トータル消耗品費

  • トータル工場間接費

  • トータル減価償却

これらが 一枚の管理会計ビューで見えるだけで、 経営者は一気に正しい判断ができるようになります。

またそのほうが手を打ちやすいと思いませんか?

 

以下の図は、管理会計で用いる CVP(損益分岐点)の基本構造を示しています。

売上・変動費・限界利益・固定費・EBITA の関係が一目でわかり、

「どこを動かせば利益が改善するのか」を直感的に理解できます。:


 

この考え方のほうがシンプルで経営者はコスト改善の手を打ちやすいと思いませんか?

私でしたら、

先ずは会社の損益分岐点はいくらなのかを計算します:

(例)売上100/ 変動費60/ 限界利益40/ 固定費45/ EBITA Loss -5だとすると、

損益分岐点= 45 ÷ (40/100) = 112.5

 

このケースでは現状-5のEBITA赤字が出ていることを踏まえ、

1.     売上を112.5以上にするか

2.     変動費を12.5以上下げるか

3.     固定費を12.5以上下げるか

 

の選択肢が浮上します。1は市況から難易度が高い、2は高インフレ下において仕入先との交渉は不可能、となると3を選択するしか手立てはありません。

 

そこで私でしたら、

  • どの固定費が会社として負担が多いのか?

  • どの固定費が削減可能か?

  • どの固定費をどれだけ減らせば損益分岐点が下がり利益率が改善できるか?

を考えて手を打つと思います。

 

以上簡単な例ですが、管理会計手法を使って固定費全体を可視化すればこのような経営判断ができるのです。

 

6. では誰が管理会計ビューを作るのか?

ローカル子会社には:

  • 経営企画部門は存在しない

  • 経営企画がいても数字の源泉を理解していない

  • 結局、数字を作れるのは経理だけ

しかし、経理に Excel で管理会計資料を作らせるとオーバーワークで破綻します。

 

7. 解決策:管理会計ビューを自動生成できる会計システムを導入する

多くの会計システムには昔から:

  • 固定費の自動配布(配賦率設定)

  • 変動費・限界利益・固定費の自動ビュー

  • 製品別・部門別の限界利益分析

 

など、管理会計を自動で作る機能 が備わっています。

つまり:

✔ 経理の負担を増やさず

✔ 管理会計ビューを自動生成でき

✔ 経営者は 固定費/LOB(または製品群)別の限界利益で意思決定できる

 

という 三方良しの状態 が作れます。

 

だからこそ、

HQ 経理は、ローカル子会社が管理会計ビューを負担なく使える会計システムを提供すべきであると考えます。

 

 

【結論】

財務会計(Gross Margin/SG&A)だけでは経営はできません。 固定費が COS に混ざる構造上、Gross Margin では正しい判断ができないのです。

 

販管費に表れる経費は“氷山の一角”であり、 全体を見ない限り、正しい意思決定はできません。

正しい意思決定には、CVP の構造に基づいた 管理会計ビュー(Contribution / Fixed Costs)が不可欠です。

 

そしてその実現には、HQ がローカルに 管理会計ビューを自動生成できる会計システムを提供することが必要であると考えます。

 

 

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